鶏子
今日は、ちょっとおめかしして、国連本部にお呼ばれしている。
隣には、なんと・・・・・・・・・
国連のお偉方が、光子力研究所に対して、平和賞をくれる事になった。
こういうこと、結構あるのよね・・・ 研究所にくれたり、個人にくれたり・・・
いつもなら、所員の誰かに行って貰うんだけど、さすがに相手が国連では、そうもいかなくって・・・
選んでくれた人の中に、私が以前お世話になった方がいたから、お父様と二人で来る筈だったんだけど、
お父様は急な仕事で来られなくなっちゃって。甲児くんは、前から予定があるからダメで・・・
「タキシード、すご〜く似合ってるわよ、鉄也さん」
「頼むから、そういうこと言わないでくれ・・・」
そんな、泣きそうに言わなくっても・・・ ホント、顔に似合わず、カワイイんだから。
鉄也さんがついて来てくれるコトになって、ジュンに、ふたりで行けばって言ったんだけど、
ちゃんと挨拶してらっしゃいって、送り出してくれた。おみやげ買ってくるからね。
甲児くんは、全然無関心。鉄也さんに迷惑かけるなよ、だって。エラソーに・・・
鉄也さんと浮気しても、しらないから・・・
授賞式が終わって、挨拶もできた。後は、レセプションのダンスパーティだ。がんばるぞー!
鉄也さんと踊ろうと思ったら、絶対にイヤだって言って、壁際からビクともしない。
レディに恥かかせた罪は、万死に値するのだぞ。
でも、今日の私は、機嫌がいい。おニューのドレスのおかげ。友禅で作った、オリエンタルな着物ドレス。
そのせいか、スンゴイ目立ってる。あっちこっちから視線を感じてる。
もててる、もててる、気持ちいい!
最初に、声をかけてくれたのは、地元のアメリカ人。30歳くらいかな。このパーティの企画担当者だって。
いいの?
主催者が、こんなとこでのんびり踊っていて。
場慣れしてるみたいで、軽いジョークで笑わしてくれる。ちょっと緊張してたんだけど、解けたみたい。
鉄也さんも見習ってほしいな。そっぽ向いてないで、ちょっとはこっち見てよ。
次に踊ったのは、フランス人の外務官。25歳の優雅な美形。
リードがすご〜くうまくて、綺麗だなんて言って、誘われちゃった。
甘いワインのように、酔わせてくれる。落とされちゃおうかな・・・
と、思ったら、向こうで睨んでる女の人がいる。くわばら、くわばら、美女は危うきに近寄らないのだ・・・
その次は、同じアジアから中国人。私の専攻しているエネルギー工学部門の受賞者。
悪い人ではないんだけど、ひと昔前の学者さんっていう感じ。
踊りながら、自分の研究の説明してくれてる。
くそ〜、いつか私も、そちらの賞をもらってやるぅ・・・
おっと、今度は、ガタイのいいゲルマン人。軍人さんぽいけど、政府のお役人。
シャープな顔立ちも、逞しい体もちょっと好みではあるんだけど・・・
もしも〜し、楽しいですか? 少し笑ってくれませんか?
まるで、マジンガーと踊っているよう・・・ ドイツの鉄也と名づけよう・・・
最後に声をかけてきたのは、ナンパ大国イタリアから。スポンサーの息子だって。
さっきとは大違いの、社交的ではあるが、少し馴れ馴れしいような・・・
ね、ちょっと、そんなにくっつかないでよ、手が下がりすぎてない?
やだ! 耳元で話しかけないで、ここで殴るわけいかないんだから・・・
だれか〜、たすけて〜〜〜
"Excuse me・・・"
う、うそみたい。慣れた手つきで、鉄也さんが救い出してくれるなんて・・・
そのまま、フロアで、踊ってくれてる。なんか、すごく、カッコいい・・・
「これが最初で、最後だからな。二度と、こんなことさせてくれるな」
うひゃ〜、低い声が、頭のほうから足の先まで響くよ〜! この感動をどうやってジュンに伝えよう・・・
「ジュンには余計なこと言うんじゃないぞ。おかしな詮索されたら、たまらんからな」
はいはい、左様ですか。わかりましたよ。
でも・・・ いいか。こんな場所で、二人だけの秘密っていうのも、なんか素敵・・・
「まったく、甲児に頼まれなければ、こんなこと・・・」
チェッ、ムードぶち壊してくれるなあ。
そっか・・・ 一応、あいつにも、おみやげ、買っていってやろうかな・・・
とりあえず、ダンスのお礼を・・・・・・ chu?
end